ちょっと晴れたので……
梅雨の合間、貴重な晴れ間——。
昨年末から主夫になって自由な時間が増えました。
なのに、あまり外を出歩いていない。
僕が家に引きこもっていても勝手に季節は移ろいでいきます。
なんか自分だけ損してるように思えて、近くのお寺へ紫陽花を見に行きました。
視界の解像度
境内に到着すると、平日の真っ昼間にもかかわらず賑わっていました。
紫陽花はちょうど満開。夏を感じさせる空に向かって、もこもこと咲き誇っています。
訪れている人の多くはカメラやスマホを片手に紫陽花を写真に収めるのに夢中。
僕はせっかくカメラを持ってきたのに、なぜかファインダーをのぞく気になれませんでした。
なので紫陽花を背にしてベンチに腰掛け、ボケーッとすることにしました。
しばらくすると、周囲をヒラヒラとチョウチョが舞っていることに気付きました。
振り返るとアリたちがせっせと紫陽花の葉を歩き回っていました。
『なんかこの感じいいな……』
ゆったりとした時間に身を委ねると、視界の解像度が高くなったように思えました。
それまで華やかな紫陽花しか目に入らなかったのに、多種多様な生命の営みが見えてきたのです。
お金で買えない充足感
「こんなに身近な世界がキラキラとした活気に満ち溢れているのに、なんで僕は気付けなかったんだろう?」
空っぽの頭の中に小さなギモンが芽吹きました。
昨年まで勤め人として一生懸命に働いて、お給料をもらえるように頑張ってました。
確かに銀行口座の預金は増えました。
なのに、目がかすんでしまったのか、単純な目の前の美しさが見えなくなっていきました。
どんなにお金を持っていても、紫陽花を好きなタイミングで咲かせることはできません。
ましてやチョウチョやアリたちに「空を舞うように」とか、「蜜を集めるように」とかお願いすることもできません。
この日、お寺のベンチに座っていて、お金で買えない何か素敵なものを見つけた気がして、ちょっと嬉しくなりました。
立ち上がろうとして目に入った数日ぶりの青空が、いつもより少しだけ色濃く感じられました。