大将がゆく

写真を撮ったり、イラストを描いたり……日本一周の旅をした主夫の日記帳

もし貴方が総理大臣だったら?

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このブログでは、意識して社会情勢や政治については言及してきませんでした。

ただ、今日のウクライナ情勢のニュースを見聞きしていると、大学時代の講義を思い出したので記しておきます。

大学4年生のとき、単位に追われていた僕は土曜日まで講義を受けていました。

そのうちのひとつが国際政治論。現役の外交官が講師としてやってくる、非常に貴重な時間でした。

そんなある講義で先生は学生に問いました。

「仮定の話だが、帝国主義的野心を抱えた近隣国が日本に対して軍事行動を起こす兆候をキャッチしたとする。もし、そのとき貴方が総理大臣だったら、どのような外交方針を出すか?」

パッと指名された女子学生が「なんとか対話での解決を……」と口にした途端、先生の表情が険しくなり話を続けます。

「侵攻されそうになったとき、程度の問題はあれ、既に相手は攻撃の準備を整えている。交渉が始まる前にミサイルを撃ち込まれたらどうする?」

「そもそも『気に入らなければ、今すぐにでも侵攻を開始する』という態度の相手との交渉がどのようなものになるか想像ができるか?一国の首長として貴方は実際の被害が出ていない状況で何を差し出す?そして、その損失をどのように国民に納得してもらう?」

さらに先生はたたみかけます。

「相手国の立場になって考えてみなさい。“交渉のテーブルに着く”というのは少なからず譲歩せざるを得ない状況が容易に考えられる。ならば先制攻撃を加えてから対話の場に足を踏み入れた方がいいのではないか?そうすれば向こうから白旗を上げてくるかもしれないし、少なくともこっちには“攻撃の中止”というカードがあるから有利な条件を引き出しやすくなる」

「つまり相手国に多少の犠牲を厭わない覚悟があるなら、先制攻撃がもっとも有利なポジションを取りやすい選択となる」

結局、その講義では学生側からは解決案を出せず、教室では先生の声だけが響くこととなりました。

そして、今回も米露の首脳級会談がスケジュールされたと報道された直後、ロシアは軍事作戦を本格的に展開しました。まさに講義のケーススタディーのとおり。

この講義の終盤、先生が発した言葉が卒業から10年近く経つ今でも僕の脳内で反響し続けています。

「もちろん外交の現場に身を置くものとして、会議場で何事も解決できるように心血を注いでいます。そこで“この先には1億2千万の国民の命がかかっている”という緊張感は常に感じています。でも、人間というのは『話せばわかる』が通じない関係に簡単に陥ってしまうんです」

「国際ニュースでは毎日のように紛争のことが報じられていますよね。どの衝突でも事前に多くの人が何とか必死に対話で解決しようとしていたはずなんです」

「日本では幸いなことに、70年近く軍事的な衝突に直接的に巻き込まれていません。でも、戦禍はいつ我が身に降り掛かってくるかわからないんです。戦争は相手がその気になれば、簡単に始められます。だから、“平和”をどのように実現するか?の具体的手段を常に考えてほしい」


新型コロナのパンデミックで世界情勢が荒波に揉まれているのは感じていましたが、『板子一枚下は地獄』であることを改めて感じています。

また明日も平和に起きて、暖かい部屋で過ごせることを祈りつつ、今日の晩ごはんを考えたいと思います。

それじゃあ、また。