先日、レンティオでポートレート撮影に向いているとウワサのTAMRON 35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(A058)というレンズを借りました。
7年ぶりのタムロン高倍率ズーム
35mmから150mmという幅広い焦点距離をカバーする、いわゆる「便利ズーム」に分類されるであろう本レンズ。
絞り開放値は焦点距離によっても変動しますがF2からF2.8とかなり明るく設計されていることが特長です。
タムロン社の高倍率レンズは過去に所有していたことがあり、2017年にバイク旅をしたときにCanon EOS 5D Mark IIにTAMRON 28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD(Model A010)をつけていました。
こうした高倍率レンズというのは利便性や携行性と引き換えて写りが悪いといのが“常識”でした。実際、Model A010は周辺減光と歪みが強く出ていたうえ、解像感が低いと感じる場面が多々ありました。
しかし、そんな常識も技術の進歩によって過去のものになっているというので、ここはひとつ確かめてみることにしましょう。
……なんて上から目線で書いちゃいましたが、センサーにホコリやゴミが付着するリスクが高いミラーレスカメラにとってレンズ交換の頻度を減らせるのは間違いなくメリットがあります。
また1本のレンズのカバー範囲が広ければ、それだけシャッターチャンスを逃しにくくなるという利点も見過ごせません。
重量感はあれど便利
僕が所有している標準ズームレンズはSONY FE 20-70mm F4 G(SEL2070G)。絞り開放値がF4のいわゆる小単元ズームですが、広角側が20mmからスタートするので風景撮影などに役立っています。
こうして並べてみると借りてきたTAMRON 35-150mm F/2-2.8 Di III VXD(A058)は長さも太さもひとまわり大きいことが分かります。
また重量もSEL2070Gが488gであるのに対し、Model A058は1,165gと倍以上です。もはや望遠ズームと同じくらいの重量感ですが*1、見方を変えればその程度の重さなので持ち運べないわけではありません。重いけど。
レンズ本体の造りはチープなものではなく、鈍い光沢を放つ外装です。レンタルだったので細かなカスタムはできませんでしたが、横位置と縦位置の2箇所にカスタムボタンがついているのも好印象です。
なおレンズ側に手振れ防止機構はついていませんが、α7R IVの本体内手ぶれ補正で対応できました。また望遠域に入っても明るい絞りを活用してシャッタースピードを稼ぐ対策が可能です。
作例:便利なのに綺麗なボケ味
このタムロン Model A058を持って出かけた先は定禅寺通りと八木山動物公園。
6月に入ってから初夏の日差しが厳しさを増すなか、綺麗な光に恵まれて撮影できました。
Model A058を借りたのは働いている人々の様子を写真に収めるお仕事をいただいたためです。
オーダーはカメラマンから立ち位置やポーズを指示せず、あくまで自然な表情を撮ってほしいという内容だったので、なおさら撮影側で画角や位置を調整しないといけません。
その点、交換不要で35mmの標準域から150mmの望遠域まで一気にカバーできたので、室内から屋外まで様々なシチュエーションで非常に助かりました。
また同じ立ち位置からでも瞬時に引きと寄りが撮影できたので、バリエーションに富んだカットを残すことができました。
AFの速度と性能も申し分なく、人物撮影では必要十分。瞳認識とAF-Cで被写体を追いかけられたので、比較的浅い被写界深度でありながらもピントを外すことは少なかった印象でした。
とはいえ爆速ではないので野鳥など高速な動体撮影だとちょっと頑張って撮影者の腕前でカバーするなどの必要があるかもしれません。
総評:重さは筋力で解決すればいいと思う
タムロン Model A058は人物撮影をするときに多用される35mm〜150mmという焦点域を抑えつつ、しっかりと綺麗に写るレンズでした。
ちなみに借りた4日間で1,000枚ほどこのレンズを使って撮影しました。短い時間ですが感じたメリットとデメリットは以下のようなものでした。
メリット
- 高級感はないものの、しっかりとした造り
- 35〜150mmを1本でカバーできる
- 絞りがF2から始まる明るいレンズ
- 絞り開放から十分にシャープな写り
- AFの速度、正確性は必要にして十分
デメリット
- 絞り値が可変なのでボケが変わる
- 重量が約1kg。撮影が筋トレになる
使っているうちに気になったことは絞り開放値がズームの位置によってF2〜F2.8で変動するためにボケ量が変わってくることです。
そのため途中からはF2.8以上で固定して使うようになりましたが、それでも十分なボケ感だと思います。
あとは重さにどこまで耐えられるか?ということじゃないでしょうか。
これも個人的見解ですが、そこは筋肉がソリューションだと思いますんですよね。使い続ければ次第に上腕二頭筋が発達するはずです(笑)。
率直な感想を書くと、持ち上げたときの第一印象は「思ったよりも軽いな」だったんですよ。
使っているうちに「重いかも……?」と気づくようになったんですけど、僕の中で比較対象がモータースポーツを撮るときに使っていたキヤノンのEF100-400mm II型にEOS R6の組み合わせ(総重量は約2.2kg)でしたからね。α7R IVと組み合わせてもヒョイと片手で持てたんで、今でも軽くはないけど1日ずっと手持ちで使える重量だと思っています。
でも、これ以外にはあまり大きなネガティブな要素は見つけられず、いい意味で便利ズームレンズに裏切られました。
ちなみにModel A058は新品価格で18万円ほど。その焦点距離をカバーするために複数本のレンズを買うことを考えたら、むしろ安すぎるとさえ思えてしまいます。
ていうか、そうやって複数本のレンズを持ち歩くと結局カバンが重たくなるので、Model A058を1本にまとめておいた方が機材の総重量は軽くできるかもしれませんね。
今回、主な目的は人物撮影で借りたレンズですが、作例撮りした動物園とかステージイベントの撮影などでも活躍しそうなレンズだと思いました。
おそらく同じ焦点距離と絞り開放値でも単焦点レンズだったり、SONY純正のGMレンズに比べたら画質は負けるんでしょうけど、コストや利便性と何をトレードオフにするか?と思案するのってレンズ沼の醍醐味のひとつでもあるわけです。
ただ、少しでもメリットを感じることがあるのであれば、試す価値のあるレンズだと思います。
それじゃあ、また。
*1:SONY純正の大三元望遠ズーム、FE 70-200mm F2.8 GM OSS IIが三脚座を除いて1,045g