ついに引退
東京・竹芝桟橋と伊豆諸島を結ぶ東海汽船の大型貨客船、2代目〈さるびあ丸〉が引退します。
28年ものあいだ活躍してきた当船は、伊豆諸島航路では明日(6月7日)が見納め。そして最終航海は6月25日の東京〜八丈島航路とのことです。
過去に撮影したその美しい船影を見返していると、8年前の夏の思い出が蘇ってきました……。
夜間航海
2012年の8月1日、大学生活最後の夏休み。僕は竹芝桟橋にいました。
このほかに帰省ラッシュでごった返す旅客ターミナルに浮かれた大学生が15名ほど。
僕たちは「夏合宿を離島で行う」というゼミの伝統にのっとり、伊豆諸島・神津島を目指して集まりました。
そして缶ビールとお菓子をしこたま買い込んで、〈さるびあ丸〉に乗り込んだのです。
夜23時、出航。心地よい警笛が船内に響き渡りました。
同窓たちは乗船するや否や後部デッキのテーブルに陣取ってささやかな宴会を始めました。
10分もすればほろ酔い気分になった一同はきらびやかなレインボーブリッジに大興奮するのでした。
とはいえ、そんな宴は長続きせず、一人また一人と船内に戻っていくと共に、都心の喧騒が次第に離れていきます。
しばらくすると〈さるびあ丸〉は満月に照らされた真っ黒な海面を滑るように進んでいました。
美しき島々たち
その夜はロクに寝れませんでした。
なんにせよ、はじめての外洋航海。床で横になると船体の上下動を全身で感じてしまって、酔ってしまいそうです。
『ちょっと外の空気でも吸ってこよう……』
と寝不足のまま甲板へ通じる扉を開けたのが朝の4時半。
そこでは水平線を染め上げる朝焼けが待っていました。
洋上で迎える朝がこんなにも美しく、清々しいものだと初めて知りました。
そして次第に日が高くなってくると、〈さるびあ丸〉は各島に寄港していきます。
〈さるびあ丸〉と〈飛鳥II〉
航路の最深部、神津島にやってくると思わぬ先客が停泊していました。
真っ白なハルに赤い二本線のファンネルマーク……郵船クルーズが運行する豪華客船〈飛鳥II〉です。
いよいよ〈さるびあ丸〉は多幸湾(三浦港)に入港。
去り際には〈飛鳥II〉とのツーショットを写真に収めることができました。
お祭り、海水浴、夕暮れ、花火大会
神津島では2泊3日の滞在でした。
バカンス気分が拭えませんが、一応、これは“ゼミ合宿“。
なので午前中の涼しいうちは“お勉強タイム“として民宿の食堂で判例研究です。
女将さんに「イマドキの若い人も勉強するんだねぇ」と感心されたのを覚えています(笑)。
ランチを求めて町中の食堂に繰り出してからは自由時間。
お祭りを眺めたり、真っ白な海岸で海水浴をしたり、夕暮れ時には沈む太陽を眺めたりました。
そして、初日の夜は気持ちよい海風に吹かれつつ、神津島の花火大会を鑑賞しました。
……ちょっと待って、8年前の僕はこんなに青春してたの!?
帰路は東京港鑑賞
2泊3日の合宿も終わり、ふたたび〈さるびあ丸〉に乗り込んで帰路につきました。
伊豆諸島から竹芝桟橋へ向かう上り航路は明るい時間帯なので、東京湾に入ると他の船舶や沿岸の様子がよく見れます。
羽田空港から飛び立つ飛行機を見上げたり、大きな貨物船とすれ違ったり……
そうこうしているうちに、あっという間に竹芝桟橋に到着してしまいました。
いつか妻と一緒に新しい3代目〈さるびあ丸〉で神津島に行きたいなぁ。
いやぁ、もう30歳だし、あんな楽しい夏は来ないのかも。
でも、そういえば2017年にバイクで日本一周したとき、夏の北海道で楽しい時間を過ごしたなぁ……。
—— おっと、思い出話が途切れそうもありませんね。
バイク日本一周の思い出に浸るのは、後日のお楽しみにとっておくことにします。
それでは今日はこのへんで。
ではでは……。