仙台の沿岸部で実証実験として7月22日〜9月30日の期間限定で設置された電動キックボードに乗ってきました。
1枚であらわすと……
イラスト1枚であらわすとこんな感じになりました。なかなか面白い体験でした。
利用開始まで
説明だと「アプリを入れるだけ!」みたいな書かれ方ですが、アプリをインストールしてからの手続きが大変でした。
アカウントを開設するのはもちろんのこと、全11問の交通ルールテストに全問正解しないといけません。またクレジットカードを登録しないといけませんし、免許証などの身分証を写真に撮って送信するようにも求められます。
レンタカーやレンタルバイクだと思えば当たり前なのですが、それなりの個人情報を送ることになるので少し気が引けたというのが率直な感想です。
乗ってみて
いいところ
簡単に借りられる
事前準備さえ終わればキックボードを借りるのは簡単でした。
アプリ内の地図からレンタル拠点を選び、好きな機体を選んで「ライド開始」を押します。すると10分程度はそのキックボードが予約状態となり、他の人が使えなくなります。
現地では予約したキックボードを見つけてハンドルにあるQRコードをアプリで読み取ると、機体のロックが解除されてスタンバイ状態になりました。
静かで快適な走行
右手の親指の操作だけで音もなくスィー!と勝手に走っていく感覚は気持ちよかったです。
また最高時速20キロというのは意外にもスピード感があり驚いてしまいました。
バイクを手放してから6年ぶりに風を切って走る快感を味わうことができました。
よくなかったところ
バランスの悪さ
様々な場所で指摘されている通り、電動キックボードは非常にバランスがとりづらかったです。体感した要因としては
- ハンドルの切角が大きすぎる
- ハンドルが軽すぎる
- タイヤが小さくて路面の凹凸を拾いやすい
- 足を縦一列にそろえないといけない
あたりです。
1番〜3番はいわゆる“ジャックナイフ”を引き起こしやすく、小さな段差でも前転するような姿勢で転倒する事態を招きやすいです。
まずハンドルは昔ながらの遊具であるキックボードと同じように軽い力で深く切れます。そのためちょっと油断するとフロントがつまづくような感覚で転んでしまいます。
特に走行中に何かしらの拍子で片手運転になるとハンドルの保持が一瞬で難しくなり(直進安定性が皆無)、前輪が真横を向いてジ・エンド。今回は農道を走ってたので途中で鼻先に羽虫が止まってしまい、とっさに左手で払おうとしたところ転けそうになりました。
あとこれは減速時に限られますが、ブレーキレバーが遠いのも操作性を下げる一因にもなっていると思います。
自分の手の大きさでは少し遠くて握りにくいと感じるようなブレーキ位置だったため、減速しようとすると自然とハンドルを保持する力が抜けてしまいます。さらにブレーキがかかり始めるとスピードが落ちて安定性も落ちてくるので、余計に真っ直ぐに保つのが難しくなってしまいました。
このほか車体構造の部分だとタイヤが小さくて路面の凹凸を拾ってくることも問題です。
ちょっとした段差や凹みもしっかりと衝撃となってハンドルに伝わってくるため、気を抜いてハンドルを持ってると一瞬で足元をすくわれるように転倒につながってしまいます。
また4番に挙げた乗車姿勢もバランスを取りにくくしています。
キックボードなので前後方向に足をそろえて乗車することになります。いわば平均台に前を向いて立っているような姿勢なので横方向への対処が難しい。
乗っているうちにできるだけ車両後方に体重をかけつつ、少し腰を落として重心を低くし、同時に衝撃を膝のクッションを使って吸収できると走りやすくなることを発見しました。でも、しっかりと下半身の筋力を使う姿勢だったので長続きしませんでした(笑)。
また立ち姿勢であることの意外な盲点として、バランスを崩した時に足をつきにくいということがありました。
バイクや自転車などの二輪車に乗ってるときに転倒しそうになったら足を出して支えようとします(大型バイクなどで効果的かつ安全な対処であるかは置いといて)。この際にサッと足を出せるのは座っていて膝が曲がってるから。
だけどもキックボードの場合は立ち姿勢なので、足を出そうとすると
- 片足立ちの姿勢になる(=重心を移動させる)
- 空いた片足を少し曲げる
- 地面に向かって踏み出す
というプロセスが必要になります。
これをバランスを崩しているキックボードの上で、しかも一瞬で、重心を変えられるか?というと必ずしも対応できる動作ではないと思いました。
車道を走るには遅すぎる
前に「意外にもスピード感があり」と書いてますが、あくまで感覚的で主観的なものです。
実際には時速20キロというのは車道では相対的に非常に遅い乗り物となるため、常に真横を自動車やバイクが追い抜いていくことになります。
今回のライドでは農道を中心に走り、意図的に交通量が少ない道を選んでいたのですが、それでも途中で軽トラに抜かれた際には結構怖かったです。
前項にも挙げた構造的なバランスの悪さによって、自転車に乗っていて抜かされるよりも転倒の危険性を感じました。
僕が考える改善案
僕個人としては電動キックボードのシェアサービスに大きな可能性を感じているんです。
駅前から目的地までの“ラストワンマイル”を埋める気軽な乗り物としての需要は全国各地にあるはず。そこで勝手に改善案を示そうと思います。
- とりあえずタイヤ径を大きく → 10インチくらいでいいかな?
- フロントフォークのキャスター角をもっと → 路面の段差を克服したい
- サスペンションが欲しいです → 乗り心地が良くなるので
- イスをつけちゃいましょう → ジャックナイフ防止のために重心を後輪側に持っていきたいのと、乗車中に楽チンだし、足も出しやすくなって転倒防止にもなります
- 願わくばスピードも出せるように → 一般道で流れに乗れるように60km/hくらいは欲しいです
- そのほかいろいろ
……あ、もうこれ原チャか原付二種でよろしくて?
それじゃあ、また。
撮 影:2023年9月 in 宮城県仙台市
カメラ:FUJIFILM X100V, GoPro HERO 11 Black